個人事業主のスーツ代は経費で落とせるか?

 

 横浜関内の会計・税理士事務所オリナス・パートナーズです。

 個人事業主の方から、スーツ代は経費で落とせるのかという質問や相談を受けることがあります。

 定番の質問でありますが、今回は「個人事業主は、スーツ代を経費で落とせるか?(経費として認められるか?)」について解説します。

税務調査 スーツ代は経費にならないと指摘

 スーツ代は、税務調査で調査官が必要経費として認められないとして指摘する定番のものです。

「仕事では必ずスーツを着用しています。休日はスーツを着ていないです。」

と、税務調査で説明しても、

「仕事終わりに、プライベートで飲みに行くときはスーツですよね?」

「パーティーや友人の結婚式ではスーツですよね?」

と調査官は指摘します。

「でも、大半が仕事中に使用しています。」

と言うと

「では、使用時間について、仕事に使用した部分とプライベートに使用した部分とを明瞭に区別することができますか?できるのであれば、仕事に使用した部分のみ、経費で落とせます。できないのであれば、全額経費計上は認めません。」

と言われてしまいます。

スーツ代は経費にならない 所得税法の考え方

 所得税法第45条において、家事関連費等の必要経費不算入等という規定があり、

「家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの」については必要経費として認められていません。

「家事上の経費」とは生活費などのプライベートな費用なことで、

「これに関連する費用」は家事関連費といわれるものです。

 後述の判例より、スーツ代は仕事にも関連するものとして家事関連費になるとされています。

 一方で、所得税法施行令第96条において、

「家事上の経費の大部分が業務遂行上必要で、その必要部分を明らかに区分できる場合は必要部分の経費は損金算入できる」

とされています。

スーツ代は経費にならない 京都地裁の判例

 上記に関連する裁判として、以下のケースがあげられます。

 それは、ある大学教授が確定申告をしなかったために税務署から税金を決められた際に、給与所得控除について給与所得者に対して著しく不公平だとして、スーツ代も必要経費であるとして争った裁判です。

 昭和49年5月30日京都地裁での判決によると、

「被服費は、一般的に個人的な家事消費たる家事費に属すると解するのが相当である。」としたうえで、

「専ら、または、主に家庭におけて着用するのではなく、これを除き、その地位、職種に応じ、勤務ないし職務上一定の種類、品質、数量以上の被服を必要とする場合には、その被服費の支出は勤務についても関するものとして、家事費ではなく、家事関連費であると解するのが相当である。」としています。

 さらに「被服費の支出も、勤務上必要とした部分を、他の部分と明瞭に区分することができるときは、当該部分の支出は必要経費になると認める余地がある」としています。

 つまり、スーツ代は、家事費ではなく家事関連費用であり、仕事に関連する部分と個人的な部分を明確に区分されている場合は、仕事に関連する部分を必要経費として認めてよいとの見解を示しています。

 上記の調査官の主張根拠は、スーツ代は「明らかに区分することができない」ので必要経費として認めないとしているのです。

 なお、この裁判では、大学教授がスーツ代を支出した根拠がないため、経費としては認められませんでした。

スーツ代を経費で落とすには

 それでは、スーツ代が経費として認められるにはどうすればよいのでしょうか?スーツ代を経費として認めてもらうには、例えば以下のようなことが考えられます。

・事務所に更衣室を設け、そこにスーツを置いておき、仕事中のみ着ることとする。

・毎日写真でその日のスーツ姿を撮影する。休日の普段着も撮影しておく。

 100%の保証はできませんが、このようなことを地道に行えば、調査官を説得できる根拠となり得るでしょう。

 個人事業主の方が必要経費として計上するかどうかは、顧問税理士と相談して経費計上することをおススメします。

 

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