収益認識基準 出荷基準について

 公認会計士の鈴木泰浩です。

 多くの企業では、出荷基準による収益認識を行っております。これは、従来「商品等の販売又は役務の給付により実現したものに限る」という実現主義の考えに基づき、一般に認められてきた実務慣行になります。

 今回は、収益認識基準の適用に際して、出荷基準が引き続き認められるかどうかについて解説を行います。

収益認識 原則的な考え方

 収益認識基準では、商品の販売により履行義務を充足した際には、顧客が資産に対する支配を獲得した時点で収益を認識することになります。

 顧客が資産に対する獲得した時点については、例えば、以下の5つの指標を考慮することになります。

(1)企業が顧客に提供した資産に関する対価を収受する現在の権利を有していること

(2)顧客が資産に対する法的所有権を有していること

(3)企業が資産の物理的占有を移転したこと

(4)顧客が資産の所有に伴う重大なリスクを負い、経済価値を享受していること

(5)顧客が資産を検収したこと

(収益認識基準第40項)

 契約内容及び取引の実態を考慮する必要がありますが、上記の指標を踏まえると、原則的には、無条件に出荷基準による収益認識は採用することはできなくなります。

出荷基準 容認規定

 上記が原則的な考え方ですが、収益認識適用指針第98項で出荷基準等の取扱いとして容認規程が定められています。

 商品又は製品の国内の販売において、出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時までの期間が通常の期間である場合には、出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時までの間の一時点(例えば、出荷時や着荷時)に収益を認識することができる。

 ここでの通常の期間とは、国内における出荷及び配送に要する日数に照らして取引慣行ごとに合理的と考えられる日数である場合のことをいいます。具体的に、国内おける配送としては数日間程度の取引が多いものとされています。
 このような容認規程が定められているのは、出荷基準を採用した場合と商品又は製品の支配が顧客に移転される時に収益を認識する基準(例. 検収基準)を採用した場合の差異が、金額的に重要性が乏しく、財務諸表間の比較可能性を大きく損なうものでないと考えられるためです。

まとめ

 今回は収益認識基準の適用に際しての出荷基準について解説を行いました。従来通り、出荷基準が無条件に認められるわけではなく、出荷時点から支配が顧客に移転される時点が通常期間に該当するかどうかの検討が必要になります。

 鈴木泰浩公認会計士・税理士事務所では、収益認識基準の適用に際して、上場会社の関連会社やIPOを目指す会社向けのコンサルティングを行います。大手監査法人出身の公認会計士が対応します。

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