スタートアップ 資本政策の注意点

 公認会計士・税理士の鈴木泰浩です。

 スタートアップ、ベンチャー企業が、企業価値を向上させて将来的に株式公開(IPO)を視野に入れているのであれば、資本政策を立案する必要があります。

 資本政策は後戻りできる話ではないので、慎重に考える必要があります。

 今回は、スタートアップ、ベンチャー企業の創業期、シード期といった、初期段階における資本政策の注意点をお伝えします。

資本政策とは

 資本政策の主な目的は、①資金調達、②創業者・経営者の持株比率維持を最適化するということです。

 その他の資本政策の目的としては、創業者のキャピタルゲイン確保、従業員・役員へのインセンティブ付与があげられます。

資本政策の注意点① 共同創業

共同創業の問題点

 創業メンバーが複数いて、複数の創業メンバーが同じ程度の持株比率を持っていたとします。

 創業期からIPOまで、創業メンバー間の関係性が変わらなければ何ら問題がないのですが、創業メンバーが離脱するようなことがあると、一気に不安定な株式が存在することになります。

 スタートアップ、ベンチャー企業が順調に成長し企業価値が向上し、それに伴い株価が上昇するとなると、離脱した創業メンバーが経済的利益を大した努力することもなく享受することになります。

 いわゆるタダ乗りという話です。

株主間契約、ベスティング(Vesting)条項

 上記の問題を防ぐためには、創業メンバー間で株主間契約を行い、株式の全部又は一部を買い取るようにする契約を定めていくことが必要になります。

 この場合、「ベスティング(Vesting)条項」といってスタートアップ、ベンチャー企業への参加期間に応じて、離脱メンバーの権利確定割合(株式譲渡割合)を決めておくのも有用です。

 参加期間、在籍期間が短い場合は本人の持分は0%になり、会社が指定する先に譲渡することになるのに対して、在籍期間が長くなるにつれて、本人の持分比率が25%、50%、75%、100%というように増加していきます。

資本政策の注意点② 希薄化

 創業期は資金が不足するために、エンジェル投資家が出資を持ち掛けてくれる場合はありがたく感じるものです。

 仮にエンジェル投資家が、数百万円の出資で20%、30%の持株比率を有した場合は、その後の資金調達は大きな制約を受けることになるでしょう。

 外部株主が増えることは、当然のことながら意思決定に影響を及ぼしますし、会社法上の議決権比率によって経営の安定性にも影響を及ぼします。

 例えば、3分の2以上の議決権を有していれば、定款の変更、事業の譲渡、合併、会社分割、株式交換及び株式移転が可能です。

まとめ

 資本政策は後戻りできないので、慎重に行う必要があります。スタートアップ、ベンチャー企業の、創業期、シード期においても慎重に行う必要があります。

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